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デフォルトモードネットワーク(DMN)が肥満や食欲を左右する?

はじめに

デフォルトモードネットワーク(DMN)という言葉を聞いたことがありますか? DMNとは、ぼんやりしているときや考え事をしているときに活動する、脳の特別なネットワークです。 最近の研究では、このDMNが肥満や食欲コントロールに関係していることがわかってきました。 今回は、このDMNが肥満にどう関わっているのかを、わかりやすく解説します。

そもそも「DMN」とは?

デフォルトモードネットワーク(Default Mode Network, DMN)とは、 脳が特に何もしていない「安静時」に活発に働く脳内ネットワークのことを指します。 主な領域として、内側前頭前野や後部帯状皮質、楔前部が含まれます。

DMNは自分自身に関する考えや記憶、将来の計画、他者の考えや感情の推測など、 「自己に関連した内省的な思考」を担当しています。 一方で、外部に注意を集中する必要がある場合にはDMNの活動は通常、低下します。

最近の神経科学研究では、肥満の人や食欲制御が苦手な人では、DMNの活動が通常より高かったり、他の脳ネットワーク(エグゼクティブネットワークやセイリエンスネットワーク)との連携が不安定になったりすることが分かっています。 その結果、注意力が散漫になりやすく、食物への欲求が高まると考えられています。

DMNの働きを理解し、その活動を適切に調整することが、効果的な肥満治療や体重管理の新しい戦略となる可能性があります。

DMNが食欲に影響を与える理由

DMNは普段、考え事やぼんやりする際に働きますが、実は「お腹が空いた」「満腹だ」という体の感覚にも関係しています。
このネットワークの活動が高すぎると、食べ物や空腹感ばかりに意識が向き、ついつい食べ過ぎてしまうことがあります。
特に肥満傾向の人はDMNが活動しすぎていることが多く、それが食欲の増加や過食につながっていると考えられています。

一方、運動を続けることでDMNの働きが落ち着き、食欲を自然に抑えられるという研究結果もあります。

DMNが乱れると肥満になりやすい?

肥満の人ではDMNの働きが乱れていることが多く、脳のネットワーク同士のバランスが崩れてしまいます。
本来なら集中する場面でDMNがうまく抑えられないと、誘惑に負けたり、衝動的に食べたりしやすくなります。
また、DMNの乱れは注意力や意思決定力の低下を引き起こすため、食べ過ぎや肥満につながることがあります。

DMNを整えて食欲を抑える方法

DMNの過活動を抑えて食欲をコントロールするには、次の方法が役立つとされています。

◆ マインドフルネス・瞑想

  • 瞑想をするとDMNの活動が穏やかになり、食べ物への強い欲求やストレスによる食べ過ぎを防げることがあります。

◆ 運動習慣を身につける

  • ウォーキングなどの軽い運動を続けることで、DMNの活動が落ち着き、空腹感が抑えられるという研究結果があります。

◆ 認知行動療法(CBT)

  • 食べ過ぎの原因となる考え方や習慣を見直す治療法です。DMNの働きを間接的に整える効果があります。

◆ 脳刺激法(TMSなど)

  • 脳に軽い刺激を与えることで、DMNの活動を調整する方法も研究されています。

最新の研究でわかったこと

◆ DMNと他の脳ネットワークとの関係性

最近の研究(Donofry, S.D. et al.)では、肥満者の脳ではDMNと他の重要なネットワークの連携に異常があることが示されています。特に、セイリエンスネットワーク(SN)エグゼクティブネットワーク(ECN)との結合パターンに特徴的な変化があります。

  • 肥満者ではDMNとSNの結合が強まりすぎる一方、ECNとの結合が弱くなっています。このことが自己コントロールの難しさや食べ物に対する過敏さにつながっていると考えられています。

◆ DMNの動的な結合の不安定性

2023年の大規模研究(Guo, Y. et al.)では、脳のネットワーク活動を時間的に細かく分析した結果、肥満の人ではDMNと他のネットワークの結合が非常に不安定であることが判明しました。

  • 特に、BMIが高いほどDMN、報酬系、前頭執行系との間で結合の揺らぎ(不安定な変動)が大きくなり、それが報酬への過敏性や集中力の低下を引き起こしている可能性があります。
  • 研究者は、この動的なネットワークの異常を改善することが、今後の肥満治療の新たなターゲットになる可能性があると述べています。

◆ 体重が減るとDMNは正常化する?

減量手術(スリーブ状胃切除)を受けた肥満患者を1年間追跡した研究(Cerit, H. et al.)によれば、体重が減少するにつれて、DMNと他のネットワーク(SNやECN)との結合異常が正常化する傾向がありました。

  • 特に興味深いことに、手術前のDMNの状態が、手術後の食行動の改善を予測することが分かっています。つまり、DMNの状態は将来の体重管理成功を予測する指標(バイオマーカー)になる可能性があります。
  • この結果は、肥満による脳の変化は改善可能であり、脳には一定の可塑性(元に戻る力)があることを示しています。

◆ ストレスと過食:マインドフルネスの効果

ストレスによる過食傾向のある成人を対象とした2024年の研究では、マインドフルネス瞑想の介入によって、DMNと脳の報酬系・視床下部との連携に変化が見られました。

  • マインドフルネスを行ったグループでは、DMNの活動が整い、食欲やストレスによる過食行動が改善されました。
  • この研究は、心理的なストレスと過食の関係を、脳ネットワークの視点から明らかにし、DMNを整えることがストレス食行動の改善に有効であることを示した重要な成果です。

これらの研究は、DMNを中心に脳ネットワークの異常が肥満と深く関連していることを明確に示しています。今後、DMNの活動を調整する治療法が肥満対策においてますます重要になってくるでしょう。

まとめ

DMNが活発すぎると、食欲が増えたり、食べることへのコントロールが難しくなります。
しかし、瞑想や運動などを取り入れることで、DMNの活動を落ち着かせ、肥満予防やダイエットに役立てることができます。
これからは、DMNという脳のネットワークを意識したアプローチが、健康的な体重管理の鍵となるかもしれません。

参考文献

  1. Donofry, S.D. et al. (2020). A review of the relationship between eating behavior, obesity and functional brain network organization. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 15(10), 1157-1181.
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  10. Cerit, H. et al. (2019). Resting-state brain connectivity predicts weight loss and cognitive control of eating behavior after vertical sleeve gastrectomy. Obesity (Silver Spring), 27(11), 1846-1855.
  11. Tovote, A. et al. (2024). Resting-state functional connectivity predicts body mass index and stress-induced eating behavior. Scientific Reports, 14, Article 3080. doi:10.1038/s41598-024-57687-7.

【免責事項】本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療方針を示すものではありません。具体的な治療・介入を検討する際は専門家にご相談ください。

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